聞き上手は腹筋で話を聞く
とある新聞の人生相談を読んでいたら、話し方教室主催の私には大変興味深いお話が載っていました。
「六十代の男性。妻が長年の不満をぶつけて来て、暴力や暴言を浴びせる」・・・
コミュニケーション力の不足は、ある日、ご本人を突然襲います(本当はもっと前から前兆はあったはずなのですが・・・)
この投稿者も、長年妻に冷たい態度や無関心を続けて来たと書いています。
おそらく四十年近くに渡る妻の不満が、この時期に一気に噴火したのでしょう。
女性は我慢に我慢を重ねた末に、怒りを爆発させます。
爆発したら、多分、回復は相当むずかしいかと・・・。
ほとんどの人は、コミュニケーション力の不足を自分に起こる事件で知ります。
夫婦の不仲、子供の反抗、仕事上のトラブル、突然の失業、友人とのケンカ・・・
ああ、もっと早くにコミュニケーションの大切さに目を向けていてくれたら。
そこで今回は誰でもできる簡単なコミュニケーション能力UPのお話を一席。
人の話は腹筋で聞く、の巻。
話は耳で聞くと思っている方は多いはず。
もちろんまずは話し手の話をしっかり聞いて、何を言っているのかを理解しなければなりません。
でもそれだけで終わったのでは、話し手はとても寂しい。
「今日ね」
人の話、とくに近しい間柄の人はこうして突然話しはじめる。
「今日ね」と言って、間を空けるのが一般的。
なぜ?
それは「相槌を打ってね」という合図。
「うん」と少々強めに相槌を打つことで「聞くよ」と返事していることに。
もしそこで「ふん」とか「ああ」なんて力も愛想もない相槌を打てば、「あまし聞く気はないけど」と言っているように見える。
さらにちょろっと視線を移すだけで、何も言わないのなら、それは「迷惑な」と言っていることになるから恐ろしい。
ええ、まさか!自分はそんなつもりは一切ないですよ。そのまま話してくれたら聞くんですよ!
と思っていたとしても、それが伝わらなければ意味がない。
この相談者もずっとそんな対応を続けて来たのでしょう。
「お前の話など聞く値打ちがない」といい続けて来たのも同じなのです。
それは妻にしてみれば「愛していない」と言われていたのと同じ。
そりゃ爆発しますわね。
聞き上手は人の話を聞くとき、腹筋を使うと聞いたら驚く人もいるかも。
「今日ね」
「うん(ちょと強めに)」
「三階の田中さんって言う人が子猫を抱いていたのよ」
「ほー」
「捨て猫なんだって」
「へー」
(我が家で本当にあった、家内の話です)
だから聞き上手の腹筋を見てみましょう。
ほとんどの人が腹筋がむっつに割れています(あ、うそです)
腹筋を使うから言葉に力がある。そして言葉に気持ちが乗ります。
話し手には「聞くよー」って言ってくれているように見えます。
それはとても嬉しいこと。
聞き下手は言葉に力がありません。
鼻から息が抜けている感じ。
気持ちも感じられません。
だから相手が話さない。だから会話が続かない。
このことに気づけたら、会話は必ずうまくなります。
私は、“人の話は腹筋で聞く”と教室で伝えています。
「あなた」「お父さん」「課長」「社長」「あのね」などと話しかけられた時の第一声こそがとても大事。
「おう!」「うん!」「はい!」
腹筋にちょっと力を入れて返事をしてくれる人を誰もが「好き」だと感じます。
私?
もちろん。
家内がどうでもいい話をはじめたら、
体を家内に向けて、「うん!」とちょっと強く言います。
すると家内は嬉しそうにどうでもいい話をしゃべります。
「そんなどうでもいい話をするんじゃありません」などとは口が裂けても言いません。
「そっかー」と相槌を打ちます。
この話を女性にすると「奥さん幸せですね」とおっしゃる方が多いです。
家内が本当に喜んでいるかどうかは、私が年をとって寝たきりになった時にわかるでしょう。
親身になって介護してくれたら喜んでいたのです。
針でチクチク刺して来たら、喜んでいなかったのです。
そのときは渾身の力を振り絞って、リポートいたします。
「聞く力がまだ足りませんでしたー」って。
世のお父さん、妻の話は腹筋で聞きくんですよ。
それが「愛している」という印だから。
話し方教室、コミュニケーション講座は口下手な人だけが行くところではありません。