話し方がうまい人へたな人(三笠書房)出版記念コラム
三笠書房より「話し方がうまい人へたな人」が発売されました。
これを記念して、その一部をみなさまにご紹介いたします。
部下からいいアイデアを引き出す「反応術」
例えば上司が部下からいいアイデアを引き出したい時。
コミュニケーションがうまい上司は、部下と話をしている時に
「具体的にはどういうことですか?」
「要点を手短に話してください」
といきなり詰め寄るような言い方はしません。
このような言い方をされると、人は「何かいいことを言わなくてはいけない」と思ってしまいます。
すると、相手を緊張させてしまい、柔軟なアイデアが出にくくなるのです。
逆に、
「なんでも自由におっしゃってくださって、けっこうですよ」
「思いついた単語だけでも大丈夫です」
このように言われると、気が楽になります。それによって、いろいろな言葉が出てくるかもしれません。
自由に話しているうちに、本人も「コレが言いたいことだった」と気づくものです。
反応の言葉は少し「大げさなくらい」でいい
そして、自由な発言を求めてみたものの、なかなか具体的な情報が出てこなかったり、ピントのずれた答えしか返ってこなかったりしても、
会話を途切れさせたり、無理に方向を変えたりする必要はありません。
「今の、いいですね!」
「そのお話、面白いじゃないですか」
などと盛り上げてください。相手は「もっと話したい」気持ちになり、会話にもますます勢いが出てくるでしょう。
その時に、
「あ、今のいいじゃないですか!」
「もっと続けてください!」
「出てきましたね~」
というような言葉を入れると、本当にアイデアが出てきたりするものです。
〝アイデアの芽″をつぶさない工夫を
相手から少しずつキーワードが出始め、そのキーワードに対するあなたの反応によって、一つのアイデアが生まれたとします。
あなた「レジャーについて自由に話してみましょうか」
相手「冬のレジャーというと……、来週スキーに行くんですけど」
あなた「へえ、スキーですか♪」
相手「そうだ、次のテーマはスキーにしませんか?」
ここでもし、「スキーは違う」とあなたが思っていたとしても、
まずは相手の言葉を受け止めるのが信頼されて味方が増える人、
なぜか情報が集まってくる人の話し方でしょう。
×「イヤ、スキーはちょっと……」
◯「ほう! スキーですか(数秒待機)」
人は自分の意見を聞き入れてくれる相手に、安心感や信頼感を抱きます。
その関係がいいアイデアを生みだす基盤となっていくのです。あなたの意見を優先するより、まずは相手を肯定してみましょう。
「否定」から入らない
読者の中には後輩やスタッフ、部下の指導を任されていたりして、「彼らが何を考えているかわからない」という悩みを抱く人もいるかもしれません。
相手の「本音」を引き出すには、普段からいい人間関係を築いておくことが必要です。
ではどうすれば、そのような関係を築けるのでしょうか。
それにはまず、相手の言葉を否定しないことです。
まず「受け入れる」から歯車もスムーズに回る
たとえば、あなたが指導している相手から何か意見を言われた時に、
「それダメだな」
「本当にそれでいいと思ってるか?」
など、否定的な返事ばかりしていたらどうでしょう。やがて「この人には、何を言っても無駄だな」と思われてしまいます。
すると、チームワークも今ひとつになるでしょうし、あなたの指導力も大したことがないと思われてしまうことにつながります。
「なるほどな、そういう見方もあるね」
「なるほど、その意見も一理あるね」
「ああ、そんなふうに思っていたんだ」
というように、まずは相手の意見を受け入れること。
また、自ら歩み寄って批判的な意見を聞いてみようという場合も、
「何か悪いところがあれば言ってくれ」という言い方よりも、
「今の環境はどうかな。何か変えたほうがいいと思うことがあれば、遠慮なく言ってもらえると助かるよ」
このように話すべきです。これなら出てくる意見も「批判」でなく「改善案」として認識されるので、相手も話しやすくなるでしょう。
相手が話にノッてくるうまい「反応術」:まとめ
- 人からいいアイデアを引き出すなら、いきなり「もっと具体的に」とか「要点は?」などといきなり詰め寄ったりしないようにする
- 「自由にどうぞ」「思いついた単語からどうぞ」と相手がリラックスできる言葉から話をはじめる
- いきなり否定しない
- 「そういう見方もあるね」「それにも一理あるね」と受け入れる言葉を多用する
- 上司を批判するのではなく改善案を出してと言うと意見が出やすくなる