他人と円満な人が使っている、大事なたったひと言
人には言ってほしい言葉がある
まゆみはいつものように朝6時に起きた。
間もなく春分を迎えようとする東の空には、明るい太陽が昇ろうとしている。
夫のトオルは3度目の声掛けでようやく布団から起き出し、
いま歯を磨いている。
二人が暮らすマンションの8階の部屋からは、大きな窓の向こうに、はじまったばかりの都会の日常が見渡せる。
「おはよう」
トオルがまゆみの背中から声をかける。
「おはよう」と振り返りざまに言葉を返すと、
トオルが彼女の肩に手をそっと置いた。
「今日はいい天気になりそうね」
彼女がそうつぶやくと、
「そうだね。いい天気になりそうだね」
とトオルが言葉を返した。
その時、まゆみはこの人と結婚して良かったと思うのであった。
トオルは平凡なサラリーマン。
顔だって十人並みだ。
ただ、まゆみの気持ちに寄り添ってくれるところが
これまで付き合った男たちとは違うところだった。
トオルと付き合うまだ前のこと、
当時付き合っていたユタカという男と二人でドラマを見ていた時だった。
まゆみが「この俳優さん、上手になったね」というと、彼はこう言った。
「まだまだだね。ただのお父さんのモノマネだよ」
二世俳優であることをユタカは快く思っていなかったのだろうか。
その時まゆみは、しかし心の奥で言葉にできない違和感を感じていたのだった。
ユタカに別れを告げた時、彼は「どうして別れるんだい?」と何度も聞いていた。
彼女はその問いにうまく答えられず、適当な理由を伝えて連絡を絶ったのだ。
今となっては、その違和感の理由がよくわかる。
人はただ「そうだね」と言ってもらいたい時がある
男と女が幸せに暮らすコツがあるのだろうか。
きっとそのコツは男と女の数だけあるのだろう。
これだけを続ければ、夫婦がうまくいくというものはない。
ただ1つ言えるのは、相手の言葉に「そうだね」と言える夫婦は幸せに暮らせる。
人は誰もが自分に同意してくれる人を求めているから。
それが夫や妻であれば、とても幸せと言える。
毎日毎日、「そうだね」と言ってもらえるのだから。
結局、人は人間関係を自分が信じる通りの形で表現する。
人間を信じていれば肯定的に。
信じていなければ、否定的に接してしまう。
人間関係がいい人は、「そうだね」「そうですね」という言葉をたくさん使っている。
相手に媚びる必要はないけれど、
相手に逆らう必要はさらにない。
ああ、この人は自分に同意してほしいのだ。
そう感じることができる。
そしてそうできる人は、多くの人から愛されるのだろう。
他人と円満な人が使っている、大事なたったひと言:まとめ
- 人は心のつながりを求めて「いい天気ね」「今日は寒いね」などと言葉を投げかける
- その時に「そうだね」と受けとめることで互いの心がつながる
- これこそが共感力
- 正論やあなたの意見はいらない