脳科学が解明した一緒にいて楽しい人の話し方

最近、大変有能なスキルを持つ生徒さまが、私の講座を受けた後、脳科学にまつわる外国の文献を調べて下さいました。
そして私の教えていることが、脳科学の面からも実証されていると教えて下さったのです。

脳科学が解明した会話の秘密

私が教室で教えているのは次のようなことです。

  • 話し手が言葉の切れ目がなく間を空けずに話すと、聞き手は映像を浮かべることができない。
  • すると、そのストーリーの意味を飲み込むのがやっとになる。
  • あまりに長い話になると、もう言葉が耳に入らなくなり、何も伝わらなくなる。

例をあげると次のような話し方になります。
「老舗って言われている寿司屋に行ったんだけど本当に建物が古くてしかも入り口が小さな引き戸になっていてそれを思い切って開けるとそこの大将と目が合ってしまったんだ」

こんなふうに話をされると、聞き手にはただ言葉の意味だけが届くという結果になります。
この状況を、生徒さまが紹介して下さった脳科学の文献ではこう説明されています。

私の要約でお読み下さい。

言葉の切れ目がなく間を空けずに話す人は多い。
その話を聞く人の脳では、イメージが湧かないために、言葉がただの情報として処理されてしまう。
この時、主に働いているのは、脳の左側にあるブローカ領域とウェルニッケ領域で、ここでは音声を言葉に置き直し、その意味を理解する働きをしている。
聞き手の脳にはただ情報がインプットされるだけで、他の脳領域との連動が起こらない。
すると感情が湧かず、会話の広がりは期待できない。

短く切って間をうまく使うと、聞き手の脳全体が働きだす

私が教室で教えているのは、短い言葉で切って、間を空け、聞き手に相づちを打たせるように話すことです。
それは次のように使います。

「老舗って言われている寿司屋に行ったのよ」
「へー」
「それがね本当に建物が古いの」
「そうなんだ」
「しかも入り口が小さな引き戸になっていてね」
「うん」
「それを開けるとね」
「うん」
「そこの大将と目が合ってしまったんだ」
「うわー。怖かったでしょう」

短い言葉で伝えてもらうと、その場面が脳裏に浮かびやすくなります。
さらにちょうどいい「間」が、想像を促すいい暇(いとま)になるのです。
映像が浮かぶことで、聞き手はまるで自分がその出来事を体験しているかのような気分になります。
それはまるで映画やテレビを見ているかのようです。

脳が同期する!

生徒さまが下さった文献には、このことが次のように書いてありました。
また私の要約でお読み下さい。

このような伝え方をしてもらえると、聞き手の脳内では言語処理の部分だけではなく、様々な領域が働き出す。

聞き手は、その話を情報として処理するのではなく、目の前で繰り広げられている出来事を、その目で見て、その耳で聞くかのようにその話を聞くことができる。
まさに話し手の体験を自分もしているかのような状態になる。

脳の活動を調べると、「それがね本当に建物が古いの」と言われたところでは、聞き手の感覚皮質が活性化する。
「しかも入り口が小さな引き戸になっていてね」「それを開けると」と言われたところでは、聞き手の運動皮質が活性化されていた。

聞き手はただ話を聞いているのではなく、自分の体を動かしているかのような状態であると言える。
聞き手は話し手が経験したのと同じ感覚を経験していたのだ!

この時、話し手の脳と聞き手の脳は同じ領域を使っていて、二人の脳は同期している!
これはニューラルカップリングと呼ばれるものだ。

さらに効果的な間を取ることにより、聞き手は話の次の展開を予測するようになる。
これが話し手のストーリーをより深く理解できることにつながる。

また、ストーリーが感情的に盛り上がる場面では、‘幸せホルモン’であるドーパミンも分泌されることがわかっている

なんという衝撃でしょう。

短く切って効果的な間を使うことで、互いの脳が同期するなんて!
別々の存在である人間が、コミュニケーションを使って1つになることができるのです。

これこそが人が一緒にいて楽しくなるプロセス!

さらに共感することでも、脳の同期が起こることが発見されています。
互いが同じイメージ、同じ気持ちになろうとすることで、脳が共鳴し、互いを結びつけます。
人はこうしてつながり合い、親しみを増すようにできているようです。

こうなると話がうまい人とは、他人とつながり合い、親しみや愛情を深める力が強い人であると言えます。
ぜひ多くの方にこのことを知って頂きたいと思います。

脳科学を使用して会話で共感を生み出す方法

生徒さまが執筆くださったブログ、ぜひこちらからご覧くださいませ。
ちなみに全文、英文です!