客の断り、聞くスキルが解決

ある歯科医師の個人トレーニングを承りました。
歯科医師も接客業。
保険で治療する義歯よりも、保険の利かない治療の方が利益が出ます。
患者も実は高額な義歯を入れた方が、長持ちで美しさのレベルが高いので、実はお金さえ出れば経済的なのです。

「NO」と言われた後の営業、そこで聞くスキルを持っていれば

ですが、営業でもない歯科医師は、高額な義歯を勧めることに抵抗感のある人が多いと聞きます。
なんでも営業力の高い医師は、自費治療(保険外)の率が70%!
営業力のない医師は、なんと1%未満!

という差が出ているらしい。

「そんな高い歯はいりませんよ。歯一本に10万円って信じられない」

こう言われるとほとんどの歯科医師は「わかりました」と言って保険治療に入るようです。

営業マンも同じ状況に置かれることが多いはず。
「それはいらない」と言われて、すごすごと帰って行く人が多いのでは?

客に嫌な思いを感じさせずに、営業の話を聞いてもらうスキル

できる営業は、聞くスキルを使ってもう一歩踏み込みます。

「ああ、〇〇様は保険での治療がご希望なんですね」
「そうです」
「よくわかりました(^^)では次回から保険を使っての治療に入りましょう」
「あ、お願いします」
「その前にせっかくですから、私たちがなぜ自費での治療(保険外治療)をお勧めするのか、お話を聞いていただけませんか」
「はい、いいですよ」

この説明のどの部分が聞くスキルだったのか。

「ああ、〇〇様は保険での治療がご希望なんですね」

実はこれが聞くスキル。
相手の気持ちを言葉にする。
これをされると相手は「自分の気持ちをわかってくれている」と喜びを感じ、あなたに心を開きます。
すると後の話も少しは聞いてあげようかという気持ちになるのです。

「それぐらいはやっている」と言う人ほど勘違いをしている

それぐらいは言っている。そう感じた人も多いでしょう。
しかし断言します。
あなたの成績がいまひとつならば、私が伝えたいニュアンスでは言ってはいないはずです。

ゆっくりと、患者の気持ちになって「あなたの気持ちはわかりますよ」という気持ちを込めての
「ああ、〇〇様は保険での治療がご希望なんですね」
なのです。

患者が「私の気持ちをわかってくれている」と心底感じる表現をして初めて、「私は言っている」と言えます。
すると医師と患者の間に信頼の気持ちが生まれます。
だから保険外治療の話も聞こうという気になったということ。
営業にも全く同じことが言えます。

「こちらの商品を今はお考えではないと言うことですね。よく分かりました。ではせめて最後に、この商品がいかに素晴らしいかを説明させて下さいませんか。数分で終わります」

と最後に粘れる人がより大きな数字を残すのです。

来たボールは必ず振る。これが営業力が上がる最大の秘訣

こうして自費治療がいかに患者の歯を守り、生涯に渡って自分の歯で噛める暮らしを実現させてくれるのかを伝えるチャンスが巡って来ました。
説明を聞けば気持ちが変わるチャンスも生まれます。
私の見たところ、全ての患者に説明を施せば、自費治療率は30%までは高められると思います。
説明力がつけば50%までは大丈夫。

私はこの医師に「来たボールは全部振ること。そうすればヒットの数は増えるから」とアドバイスしました。
営業も同じです。
一人でも多くの客に、自分の商品の素晴らしさを伝える。
この分母が多ければ多いほど数字は上がります。

営業は断られてから始まる。
この名言を実現するには、客の「NO」を受けとめ、客の気持ちを言葉にする『聞く力』が必要です。
聞く力は人の気持ちをなだめ、喜びを与え、自分の味方になってもらう力を秘めています。

聞く力と聞けば、「へー」「そうなんですか」と相づちを打つことと思い違いをしている人が多いようです。
営業に限らず、人間関係を持つ人ならば、全ての人に不可欠な力が聞く力なのです。